信州競売情報


《質問コーナー》

質 問 項 目
● 三点セット ● 抹消される権利と引継がれる負担
● 保証金 ● 公法上の規制
● 未納・滞納管理費 ● 所有・占有
● 農地の買い受けについて ● 家屋の明渡し
● 最低売却価額


● 三点セット
競売に参加する際、必ず「三点セット」を確認するようにと言われましたが、三点セットとは何ですか。


 競売における情報提供のため、物件明細書、現況調査報告書と評価書のそれぞれの写しを一般の方の閲覧に供するわけですが、これを三点セットの閲覧と呼ぶことがあります。原則として、入札期間が始まる二週間前から閲覧できます。(競売手続きの一覧

 物件明細書には、登記簿記載の不動産の表示があります。ただし、公簿と現況が違うことは時々ありますから、通常は、現況も記載されます。たとえば、増築や滅失があるとか、土地の公簿面積と実測面積とが相違することなどが書かれます。特に重要な記載は、落札後も買受人が引き受けることになる権利等の負担です。一番問題になるのは賃借権ですが、信州競売情報では「*印」を付けて、最初に書き入れることにしています。

 法定地上権の記載については、土地と建物が一括売却されるのが通常なので、それほど問題になることはありませんが、別々の際には重要な事項となります。最近では、これに別荘・マンションの管理費の滞納の記載が加わります。

 現況調査報告書は、執行官が現場に行って差押え時の現況を把握したものです。この現況調査報告書の注意点は、調査時と買受時との間にタイムラグがあることです。あまり時間が経ってしまった事件については、自分の目で確認する必要があります。信州競売情報では、写真資料の閲覧をこれに当てていますし、特記事項は、先の*の注に書き加えています。

 そして、評価人による評価書ですが、最低売却価額を決定する前提として、位置及び付近の状況、公法上の規制、土地の概況、建物の概況、公図、地図などの資料が総括されているものです。信州競売情報の中心的内容です。


● 保 証 金
@保証金は、当該不動産を落札できなかった場合には返還されますか。

 競売に参加し入札するには、入札前までに保証金を指定された方法で指定された場所に支払い、入札者側からいえば、入札意思や支払い能力のあること等を証明する必要があるわけです。通常は、裁判所指定の銀行口座に振込み、その振込金受取証明書を入札保証金振込証明書にのり付けして提出します。

 さて、入札したにもかかわらず、落札できなかった場合、保証金は当然返還されます。普通は、希望に従って、送金あるいは銀行振込によって返還されます。

Aまた落札した場合、その後考えが変わったので、残額代金を支払わず落札を取りやめにして、保証金を返してもらうことはできますか。

 では落札後翻意し、そこで残額代金の支払をやめてしまった場合、もちろん売却許可決定は取消されますが、保証金は返還されるでしょうか。残念ながら、保証金の返還請求をすることはできません(民事執行法80条1項)。しかもそれのみならず、以後、当該不動産に関する競売手続に参加する資格がなくなります。(同法71条4項)。たとえば、自分しか入札していなかったのに、あまりに高い価額で落札してしまい、それで改めて最低売却価額で入札し直すというようなことはできません。この者が第三者に依頼して脱法的に行うことも禁じられています。これらは、いずれも代金不納付の者に対する制裁です。返還請求できない保証金は、売却代金に組み込まれます。そして手続的には、当該不動産の再売却へと移行していきます。

 なお、法に規定される正当な理由で売却許可決定を取消す場合には、いうまでもなく、保証金は返還されます。

 ちなみに、保証金は最低売却価額の二割が原則ですが、相当と認めるときはそれ以上の額を定めることができます。(同法規則39条2項、49条)。また特別売却に関しては、保証金の額は最低売却価額の二割以下のこともあります。需要を喚起する意味あいがふくまれているようです。


● 未納・滞納管理費
@ある地方都市のマンションを落札しましたが、前所有者の滞納した管理費が若干あります。この管理費は買受入が支払わなければなりませんか。

 最近、多くの裁判所では、滞納額あるいはその事実を物件明細書もしくは現況調査報告書などに記載しているようですが、記載していない場合も含め、この前所有者(債務者)の滞納管理費の帰属がどうなるのかというのは、積立金ともからめて、実際の入居等にあたっては、かなり重要な問題です。

 法律的にいえば、一つには、管理組合・管理会社などの管理者には、先取特権があるので、未収金は競売手続きのなかでの配当要求という形で請求解決すべきで、買受人には支払義務はないという見解があります。また他には、区分所有法(第8条)が、管理費等の未納分をその後マンションなどを買取った特定承継人が支払うべきことを規定するので、買取人が支払わなければならないという見解もあります。しかもこの場合でも、競売の買受人が、通常の売買などと同じ特定承継人なのかということには争いがありますので、支払義務も確定的ではありません。したがって法理論上、明確な判断が確立されていないのが実情です。そのため、買受人と管理者側とのトラブルも決して少なくありませんし、この点を問われれば、(執行)裁判所も、話し合いで決せられなければ、訴訟の可能性があることを指摘せざるをえないと思われます。

A管理費がかなり滞納されている別荘の入札にあたって、どんな点に注意が必要でしょうか。

 では、このような滞納管理費のある物件に入札したい場合、どのような点に注意を払うべきかということですが、まず大事なのは、現時点までいくらの滞納額があるのかということと、この滞納総額が物件の最低売却価額にどの程度反映されているかということです。というのは、実際の問題として、これら滞納管理費を支払わなければ、買受人は、円滑に入居・別荘利用等できない情況がありますから、現実には買受人が支払わざるをえない滞納管理費を物件の評価額からマイナス要因として差引くのが適正な価額評価というべく、それ故、最低売却価額に滞納管理費を加えた金額を基準にして、買ってもよい物件かどうかを判断する必要かあるからです。この点で滞納管理費を計算に入れていないか、もしくは、買受希望者が敢えて支払わない立場をとった場合には、事後、管理費の支払を巡って争いになる可能性があることを覚悟しておいていただきたいと思います。

 ただし、管理費を支払う場合でも、管理者側との話し合いで、その額を実際の有益費相当の範囲に押さえたり、あわせて積立金についても交渉したりなど、相手まかせにしない立場が必要です。(競売の促進を考えて、管理費を放棄している場合も時々あります。)

 マンション・分譲別荘の場合、通常、ある程度の管理費滞納があるものと考えておいた方がよく、最低売却価額が低いのは実は高額の管理費の滞納があるからという点も含めて、買受申出の際には検討を十分にして下さい。なお、賃借権等の記述と違って、この点については、公告のファイルの記述自体が明確になっていないことがあるので、この滞納の有無については、買受を希望する方自身注意点として記憶にとどめておいて欲しいと思います。

● 農地の買受けについて
@現状は「原野」「山林」となっていますが、地目が「田」「畑」になっている場合、その物件は取得できるでしょうか。

 裁判所の競売は「現況主義」といって、実際の地目を中心に判断しますので、登記簿上「田」「畑」等の農地でも、現実が「原野」「山林」等の非農地であれば、農地買受適格証明書がなくとも買受け可能です。その具体的区別は、物件目録の物件番号横に☆(星印)がついていれば「農地」ということですので、簡単に判断がつきます。これは全国の裁判所共通ですから、記録を見る場合、頭に留めておいて下さい。

A農地を取得する場合にはどうすればよいですか。

 農地を取得するには、先に触れた農地買受適格証明書が必要です。この適格証明書発行の条件は次のとおりです。


1.現在、所有地あるいは借地を合わせて五反歩以上耕作している場合
2.現在の耕作面積は五反歩以下であるが、競売で取得しようとする面積と現在耕作申の面積(所有地と借地を含む)の合計が五反歩以上になる場合。
3.現在耕作しているものはないが、競売で取得する面積が一物件または一括で五反歩以上である場合。

 従って現実には、農業従事者でないと農地の買受けは困難となります。正確に言えば、農業従事者であっても適格証明書が必要ですし、非従事者であっても適格証明書が得られるならば買受けは可能です。ただし、地方の農業委員や農業委員会は地元の農用地、農業保護という意識が強いので、曖昧な農業希望者は受け入られません。

 この適格証明書は、同じ市町村内の農地を求める場合にはその地区の農業委員会に、他地区の場合には都道府県知事に申請するとになります。地元の行政書士に相談するのも一つの方法と思われます。

B農業に従事していない者が農地を手に入れる方法はありますか。

  正攻法としては、農地を借りて農業経営に実際に従事しながら買受適格証明発行の条件を実質的に整えていく方法があります。

 一方編集部がすすめるのは、競売などで山林・原野などを取得し、それを農地にしていけば農地法の規制を受けないで農地を手にすることができるというものです。農薬などで汚染されていない土地を手にできますから、かけた時間・労力に十分見合う成果を自分のものにすることができると思われます。


● 最低売却価額
競売における最低売却価額は、通常の不動産市場での取引価額よりも本当に安いのでしょうか。また安いのはどうしてでしょうか。


 競売においては、通常の不動産取引とは異なって、投資的価値や市場的価値が問題なのではなく、あくまでも債権者・債務者間の清算が目的ですから、不動産のもつ資産的価値、特に、短期のうちに確実に回収しうる経済的な価値が中心問題です。つまり、不動産のもつ、投資的・収益的側面や長期的保有の側面からではなく、現時点での確実に回収しうる価値、すなわち清算価値の観点から不動産を評価します。したがって、競売における最低売却価額は、不動産に関するあらゆる種類の価格のうちで、最も低いところに形成される価格ということができます。

 その具体的評価に関し、たとえば、土地が値上がり傾向を示している場合といえども、不確実な要素は計上しませんので、この増加分については反映させることなく、反対に、値下がり傾向である場合には、これを予想される減価として反映させるのが実務傾向となっていますから、なかでも実勢価格とはかなり乖離してしまうこともあります。また競売手続きも一種の取引ではありますが、通常の不動産市場とは異なって、売主の意思によらない売買ですから、そこから各種の減価事由が生じます。たとえば引渡しにあたって、債務者側が妨害的行為をしたり、あえて物件を壊したり、あるいは位置・範囲などを不明確にするなどということもありえます。さらに、公的借入等の使用がほとんどできないといった事情も加わります。

 こうして、やはり、競売における最低売却価額は低いところに設定されざるをえなくなってしまいます。算出方法によっても異なりますが、概括的に見て、不動産における適正な価格(正常価格)よりも3割程度は低いのが一般でしょう。

 なお、資金的点について述べるならば、住宅金融公庫の中古住宅資金の活用が可能になっています。また特別売却のようにある程度確実に買受けできるものについては、民間の(中古)住宅ローン等もそれはど難しくなく利用できるようです。その他に最近では、競売のための特別な競売ローンを取扱う金融機関も少なからず出て来ております。


● 抹消される権利と引継がれる負担
@入札前の調査として登記簿謄本をとって確認してみたところ、一番抵当権から三番抵当権まで設定されています。これは落札後、買受人が引継がなければならないのでしょうか。
A根抵当権が設定され、極度限度額が最低売却価額をはるかに超えています。この超えた分は落札者が支払わなければならないのでしょうか。


 競売制度はその手続きを通して、債務者が負担する各種負債を債権者・債務者間で清算するためのものですから、買受人には原則として債務等は承継されません。また登記簿に記載される担保権の実行として競売が行われる場合には、それによって清算をしようというのが債権者の意図ですから、その担保権が買受人に引継がれることはありません。競売前登記簿に記載される、抵当権・根抵当権・使用収益を伴わない不動産質権などの担保権は、落札後残額代金が支払われた際抹消され、買受人は負担のない所有権を取得します。

 したがって登記済証送達後登記簿謄本をとってみると、競売を原因として各担保権の抹消の登記がなされているはずです。これは、落札価額が債権額に満たない場合あるいは必ずしも全ての債権者が満足できない場合でも、原則的には変わりません。(ただし無剰余取消などの場合は別です。)

 では買受人は全くいっさいの負担等を引受けないかといいますと、いくつかの例外はあります。たとえば、差押前からの賃借権が付着する場合ですが、これら引継がれるべき負担については、物件明細書に記載されることになっていますので、これを第一に参考にするべさです。いいかえれば、物件明細書に記載されていない負担は、通例、買受人には引継がれないということです。


● 公法上の規制
市街化調整区域に住宅を建築することはできますか。


 都市計画区域に指定され、市街化区域と市街化調整区域との区別(線引き)が行なわれている場合(当分の間は大都市周辺でのみ定められている)、市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域と定められていますから、その区域内では、特定の場合を除いては、まずは開発行為ができませんし、それに引き続いて建築等もできません。ただし、市街化調整地域でも、以下の場合には例外となっています。

T 農林漁業用建築物または農林漁業を営む者の居住用建築物

U 仮設建築物の新築
V 市街化区域に隣接し、または近接し、かつ、自然的社会的条件から市街化区域と同一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であっておおむね50以上の建築物が連担している土地の区域で、かつ、市街化調整区域に関する都市計画が定められた際すでに宅地であった土地(その旨都道府県知事の確認を受けたもの)における建築(既存宅地の制度)

 すでに住宅が建築されていた市街化調整区域内の増改築については、床面積十平方メートルが一つの基準です。

 なお、都市計画には、市街化区域・未線引の都市計画区域内で定める用途地域の指定というものがあり、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域の十二に区分されます。(さらに、これに重ねて指定される、特別用途地区があります。)以上十二のうち、住宅(一戸建住宅・共同住宅・寄宿舎・下宿・併用住宅)が建てられないのは、工業専用地域だけですが、建築基準法上の容積率、建ペい率等の規制内容に関しては各地域ごと若干差異が生じます。

 未線引区域については三千平方メートル以上の開発行為につき許可が必要ということになっております。


● 所有・占有
占有の状況で「所有者が占有している」というのは、引渡の際の障害を意味しているのでしょうか。


 「Aが所有する」というのは、当該物件が法的にAに帰属するということで、ある程度、観念的意味あいをもっておりますが、「Aが占有する」というのは、これに対して、Aが事実上支配(管理・使用・利用など)しているという意味です。したがって、公告ファイル中、占有の状況で「所有者が占有している」というのは、まさに法的な所有者が現実にも支配しているという意味です。所有者以外の第三者が、使用・利用・収益などしていないわけですから、そのかぎりでは、物件の引渡も容易であることになります。

 土地の場合には、ほとんど、この点が支障になることはないと考えられます。他方、家屋の場合には、所有者が空き家のまま、自らもしくは管理者を通して占有しているのであれば、土地と同様、問題はないのですが、居住しながら占有する、すなわち住んでいる場合には、落札後、前所有者からの明渡という問題が生じます。

 しかしこれとても、第三者が占有する場合と違って、民事執行法が買受人保護のため規定する引渡命令の制度を利用できますので、最終的には大きな障害ではありません。



● 家屋の明渡し
@債務者・所有者が居住・占有する家屋を落札したのですが、現実の明け渡しについて一般的な体験例から参考となるものを教えてください。

 空家の場合と違って、人が現住している物件は、維持管理が日常的になされているので比較的荒れておらず、その意味で買受けするのによいとはいえますが、明渡しの問題をうまくクリアーできるかどうかが全てといってもよいでしょう。


 明渡しについては、体験例は大きくいって二つに分かれています。一つは、手続きをなるべく事務的に運んで、わりと躊躇なく裁判所に引渡命令をもらい、最終的には執行までしてもらうというタイプです。この場合、自分が落札した旨および明渡して欲しい旨を内容証明郵便(配達証明)で通知し、その結果、すみやかに明渡してもらえなければ、裁判所に引渡命令を請求し、さらにそれにもとづいて強制執行してもらう段取りとなります。

 他の方法は、話し合いによってことを進めるタイプで、この場合には、情がからんで明渡しが遅くなってしまう危険性もあります。が、逆に、納得してもらったうえでの明渡しですので、家屋をよい状態で手にするこができます。たとえば、一般の不動産業者から購入することを考えて、消費税分位の負担は覚悟して、明渡しに際して一定の金額を明示し、その場で半額を明渡費用として支出し、そして明渡し完了後残額を渡すことによって、非常に円滑に明渡しを実現できた例を聞いております。すぐにも生活できる状態で、しかも感謝して明渡してくれたそうで、その家の回りに親戚、知人が生活している場合には、後のことを考えるとよい方法と思われます。

 いずれの方法を選択するかは、個々のケースによって違いますが、偉丈高にならない対応が肝要だと思います。最近は、入札から引渡しまで含めて代行業者に任せることもあるようです

A占有の状況の項に「所有者及び家族が居住している」とある場合、穏当に処理するには通常どんな方法がありますか。

 落札不動産の(前)所有者は、普通、競売手続きが進行していても、自らの土地、家屋等が結局落札されるに至った日などを知らないことが多いので、買受人は代金支払後、まず第一に前所有者にその事実を告げ、一定期日内に家屋等を明渡してくれるよう要求することから始めなければなりません。前所有者が自己の不動産を競売によって処分することは決して本人の意図するところではありませんが、この一連の競売手続きによって、債務者という不安定な地位から解放されるわけですから、買受人としても、このような競売の社会的意義を踏まえて、明渡期日などの話し合いを開始していただきたいと思います。


 この話し合いで明渡してもらえない場合には、昭和55年改正の民事執行法(83条)に買受人保護のために規定される、引渡命令の制度を利用することになります。たとえば、裁判所によっては、「占有者が話し合いを守らない場合や話し合いがつかず任意の引渡をうけられない場合は買受人は代金納付後6カ月以内に裁判所に引渡命令の申立ができます。申立手続きについては裁判所にお尋ね下さい」と注意書をしているところもあります。

 (前)所有者およびその家族が居住する場合、これは引渡命令の出る典型的な場合ですので、占有する前所有者宛の引渡命令の発付を得て執行にのぞむということになります。費用、日時ともあまりかからず、手続きも簡易です。また通常、前所有者と対面する必要もありません。しかしながら、この引渡命令も万能というわけではなく、当該不動産が前所有者(債務者)以外の占有下にあるときには、各種の制約があります。したがって、第三者の占有下にある不動産の競売については、一般の人は、特別の事情のないかぎり、参加しない方がよいように思われます。

 引渡命令は、代金納付後、六カ月以内に申立てなければなりません。ただし、一度得ておけば、その(強制)執行は、必ずしも半年以内とは限りません。

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